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2011.4.11■第4回KTPAフェスティバル
2012 第四回 関西トランペット協会フェスティバル
 晴天に恵まれた10/8、関西トランペット協会フェスティバルが伊丹アイフォニックホールにて開催された。会場では開演前から大学生や、地元伊丹市民の方々がメーカーブースに所狭しと並べられた楽器に見入っていた。
 午後三時、プロ奏者8人とティンパニによるショスタコビッチの「祝典序曲」の序奏で華やかに幕を開けた。
 プログラムの第一部はトランペットアンサンブル。最初は大阪教育大学8人による、A.フラッケンポールの「イントラーダとアレグロ」。モダンセンス溢れた曲で息のピッタリあったアンサンブルを聴かせた。次に出演したESA音楽院は三日前に急にメンバーの一人が出場できなくなり、プログラムをヴェルディ作曲「アイーダのグランドフィナーレ」に変更した。急な対応にもかかわらず、4本のアイーダトランペットで、堂々とした華やかな演奏であった。同志社女子大学はJ.ラブルダの「6本のトランペットのための組曲」を、柔らかく暖かな響きで聴かせてくれた。第二楽章のエコー風のコラールが素敵だった。京都市立芸術大学6人は黒人霊歌をジャズアレンジした「ゼア・イズ・ア・グレイト・デイ・カミング」。心地よいスイングとソロ回しが楽しい雰囲気を醸し出していた。滋賀コンコードは一般参加の社会人グループで、難曲D.ホートンの「6本のトランペットのための組曲」をテンポ感良くアンサンブルしていた。社会人のグループが技術的にも音楽的にも高い水準の演奏を披露出来ることはなんともうれしい。第一部最後は相愛大学23人によるチャイコフスキーの「スラブ行進曲」。大編成ながら一糸乱れぬアンサンブルと迫力のサウンドが見事だった。

 第二部は8月4、5日に行われた関西トランペット協会コンクール入賞者による演奏。最初は第二位入賞、大阪音楽大学出身の奈良環さんで、アルチュニアンの「協奏曲」。女性らしい柔らかな音色で奏でる自然なフレージングは最後までクオリティが保たれ、安定感があった。第三位、京都市立芸術大学4年、坂本佳織さんはテオ・シャルリエの「独奏曲第二番」。シャルリエの独奏曲は第一番の方が有名だが、技術的難易度が高いこの曲を伸び伸びと吹ききった。第一位、東京芸術大学5年の閏間健太さんは二年続けて東京から参加してくれた。演奏曲はP.スパークの「マンハッタン」。米空軍軍楽隊の委嘱により作られた曲で、第一楽章はコルネットが柔らかなバラードを奏で、第二楽章はトランペットに持ち替えて、一転して速くリズミカルな音楽。エンディングの超絶技巧とハイノートも見事だった。次に登場した腕試し自由曲部門ベストパフォーマンス賞は伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団トランペットセクション。田中知幸さん、高島陽子さん、山下育世さん、森美鈴さん、奈良環さんの5人で、E.モラレスの「シティ・スケイプス」を演奏した。都会の忙しさや情景を描写した曲で第三楽章ではマウスピースを叩いてリズムと音程を作る打楽器的表現の部分が斬新だ。5人の呼吸が合った見事なアンサンブルを聴かせてくれた。第二部トリを飾ったのは関西で一番若いオーケストラ奏者の二人、大阪フィルハーモニー交響楽団の篠崎孝さんと京都市交響楽団の西馬健史さんのデュエット。曲はアルビノーニの「二本のトランペットのための協奏曲」。篠崎氏は赤、西馬氏は緑、ピアノの金田仁美さんは薄紫の衣装で現れ、はつらつとしたピッコロトランペットを聴かせてくれた。第二楽章の繋留が美しく、第三楽章は技巧を凝らした見事なデュオだった。

 さて、第三部はいよいよメインゲスト、ピエール・デュト氏の登場だ。リヨン国立高等音楽院で22年間教授を勤め、数々の有名プレーヤーを育てた名教師であり、ダヴィッド・ゲリエ氏やアンドレ・アンリ氏の先生である。今回のプロデュースもアンリ氏によるものだ。  まずレクチャーを行うものと思っていたら、挨拶代わりにと言いながらピッコロトランペットでヘンデルの「水上の音楽」を披露した。演奏し出したとたん、その音の太さと音量のすごさに会場はビックリ。とても66歳とは思えないのだ。続いてコルネットでプッチーニの「誰も寝てはならぬ」を演奏。これも圧巻でさながら張りのあるテノール歌手のようだった。
 続いて高本久也さん(相愛大学卒)をモデルに、レクチャーが始まった。まず、芸術は自己表現とコミュニケーションと説明しながら、「ミスティ」をアドリブ風に演奏した。これに対し高本氏も即興で応え、会場は大拍手。デュト氏によると、挨拶は握手より音の方が個性的でその人の多くを知ることができるとの事。そして、チューニングするにあたり、トランペット→ピアノの順番で音を出すように指示した。ピアノ→トランペットの順番だと耳が良ければ唇でチューニングしてしまうので、まずスッキリと心地よい音を出すことが大切と。
 高本氏がハイドンの協奏曲を展開部終わりまで演奏したところで、以下のようにアドヴァイスした。長所と短所を自己分析し、今の自分自身がどの位置にいるか、問題は何かを明らかにし、何をすべきか計画しなければならない。また、重心はつま先に、右手には力を入れない。ブレスは体のブレスと音楽的なブレスがあり、よく考える事。音楽はスイングすべきである。冒頭のメロディは4拍子で感じると1拍と3拍にアクセントがついてしまうので2拍子で感じる事。それぞれの音のクオリティが均一である事。また、タンギングはTahやTeeではなく、DahやDeeで、レガートはLeeと発音するよう指示し、アンドレ・アンリ氏が制作したアーバン教則本の伴奏CDを用いて付点音符などのスタイルを練習させた。このCDの伴奏が実に興味深く、練習する音符のスタイルにふさわしいアレンジが施されていて、自然と正しいリズムで演奏できるようになっていた。また、高音へのアプローチについて、口の周りの筋肉は円でできているので横に引かないよう注意した。そして、3度や8度の上行音型を「ee」を声で、「Hoo」を楽器で以下のように練習するよう説明。
3度 F→A F#→A# G→H このまま上行していく。同様に、
8度 F→F(オクターブ上) F#→F#(オクターブ上) G→G(オクターブ上)
 その後、総論的に次のようなアドヴァイスをした。日本の音楽教育は吹奏楽など、学校教育の一部になっていて素晴らしいが、初心者の段階で専門家がコーチできるようなシステムが必要である。アンブシュアに問題を抱えている学生がとても多い。正しいアンブシュアは、口笛を吹くように下あごを出して、上下の歯は同じ位置に。マウスピースは唇の赤い部分に当てない。当てる唇の上下の比率は半分ずつ、若しくは1/3,2/3か2/3,1/3が望ましい。1/4,3/4や3/4,1/4ではいけない。アンブシュアが正しくなければそれより前へ進めない。また練習方法の一例として、次のように指導。まずマウスピースを斜めにし、上唇にマウスピースの上部分だけを当て、次に真っ直ぐに戻して下唇部分にも当たるようにすると同時にバズィングする。また、同じ方法でトランペットを用いても練習する。
 熱が入りすぎて、レクチャー途中でもう終了時刻が迫ってしまったほど。休憩も省略して、続いてミニコンサートとなった。サンサーンスの「白鳥」を演奏後、アンリ氏とのデュオで、マンフレディーニの「協奏曲」、コルネットの小品等を演奏した。中でも、スコンクスの「エコーピース」という曲は、ステージでアンリ氏が吹いたフレーズをステージ袖からデュト氏がエコーし、とても興味深かった。この師弟二人の演奏スタイルは驚くほど似ていて、コルネットで速いトリプルタンギングの連続形などは、あまりにピッタリ合っていて、どちらがどのパートを吹いているのかわからないほどだった。アンコールは竹森健二氏も加わって豪華にコルネットでトリオを披露した。

 エンディングは恒例となった全員参加によるアンサンブル。地元、伊丹高校吹奏楽部の生徒6人も参加して総勢78人のトランペット奏者と岸田麗さん(京都市立芸術大学打楽器5年)のティンパニによる、ショスタコビッチの「祝典序曲」。編曲と指揮は関西トランペット協会事務局次長の野間裕史氏。開会ファンファーレは序奏だけだったが、締めくくりは全曲版で超超豪華なトランペットアンサンブル。迫力の大サウンドに客席は大喝采。今朝のゲネプロしか練習してないのに、その気になればできるものですね。
 かれこれ6時間半にも及んだコンサート、長かったけど盛りだくさんで満喫しました。来年も楽しみにしています。
京都市交響楽団トランペット奏者 早坂宏明